遠目の子鬼
彼女の役目はバンド全体のリズムを刻むのが仕事だ。


でも、単調(正確に言えばそんな事はないのだが)にリズムを刻む事に飽きは来ないのだろうか。


「ねぇ、佐藤さん…あのさ…」


僕は思い切って聞いてみた。


「うん、そうね。わたし個人の思いだけど、バンドに何が必要かって考えた時、一番最初にリズムありきだと思うの。プロのミュージシャン達がレコーディングする時、一番最初に音を取るのは、リズムセクション。だから、これが無いと、何も始まらない。そんな重要な事を任されてるのだかあ飽きる事なんて無いわ。とても光栄な事よ」

なっちゃんらしい思いだと感じた。


そうだ、バンドの中で重要じゃ無いセクションなんて無いんだ。


僕はなっちゃんの思いがじんと胸に染みた。


そして改めて、なっちゃんの事を好きに成った様な気がした。


「そうだ、保孝、お前、ソロパートの練習はどうなってるんだ?ちょっときかせてみろよ」
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