遠目の子鬼
「あ…う、うん、ちょっと待って」


僕は譜面台の楽譜をソロパートが有る曲の楽譜に置き換えると楽器を構え、その部分を演奏し始めた。


「――ふ、うん」


演奏を終えた僕の表情を又兵衛がちょっと不満げに覗き込む。


「まぁ、良くも無いし悪くも無いな」


又兵衛の感想を聞いて、僕はちょっとムッとした。


「良くも悪くも無い?」


「ああ、そうだ。感情を、上っ面の技術で覆い隠してる様な感じだ。可も無けりゃ不可も無い。中途半端だな」
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