遠目の子鬼
「やっぱり野球の応援は、暑くないとホントじゃないね」


そう言いながら、なっちゃんは、ちょっと汗ばんだ表情で青空を見上げる。


僕も彼女にならって空を見上げる。


「そうだね。やっぱり暑くないとホントじゃぁないよね」


ゆっくりと振り向いたなっちゃんの表情がとても眩しくて僕はどう答えて良いか分からず、俯きながら、はっきりしない口調で答えた。


そんな僕の態度を見ながら、なっちゃんは優しく微笑む。


「ねぇ、保孝君」


なっちゃんは優しい微笑みを浮かべ、ゆっくりとB九に近づいてくる。


僕は、なっちゃんが一歩一歩近づいてくるのに合わせて心臓の鼓動が激しくなって行くのを感じた。


「え、あ、な、なに?」
< 131 / 274 >

この作品をシェア

pagetop