遠目の子鬼
僕は心臓のどきどきに耐え切れなくなって、なっちゃんにくるりと背を向けると全く無意味に空を見上げた。


青空が眩しい…


「保孝君て、好きな子居る?」


飛び出した!。


心臓が飛び出して、自分の足元で元気にフレンチカンカンを踊って居る。


そんな感じだ。


決して大袈裟な表現では無い。


なっちゃんは、何と僕に聞いた?僕に『好きな子が居るか』と尋ねたのだ。


どういう意味だ…うん、そういう意味だ。


僕に好きな子が居るか、裏返せば『私の事好き?』では無いのか。


「う、あ、う、え~」


頭の中が真っ白に成った。


無だ…無の空間が広がった。


そして、飛び込んでくる蝉の声。


やけに頭の中で響くその声をなっちゃんの声が再び遮った。

「あのね、私の友達に保孝君が好きだって言う子が居るの。もし良かったら、一度、お話してみて貰いたいんだけど…」
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