遠目の子鬼
僕はてっきり願い事を叶える代わりに魂をよこせとか言われるんだと思い込んで居た。


仲間だって言うのも悪魔の契約みたいな物で、その後、酷く不幸に成るんじゃないかと、内心びくびくして居たのだ。


「――ほんと、ほんとに願い事叶えてくれるの?」


僕は又兵衛に、おっかなびっくり尋ねてみた。


又兵衛は仁王立ちのまま腕組みすると目をつぶったまま、うんうんと頷いて見せた。


「じゃぁ、じゃぁお願いが有るんだけど――」


「ああ、何でも言ってくれ」


「これ、上手く成りたいんだ」


又兵衛は両腕を組んだまま右目だけを開けて、僕が指差したユーフォニュームをちらりと見た。


「――保孝、欲が無いな――そんなもんで良いのか」
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