遠目の子鬼
僕は、そう実感して目を閉じた。


しかし、目を閉じて蘇ってくるのは、さっきのなっちゃんとの光景。


え~い、女々しいぞ保孝。


僕は事実上、ふられたんだ。


もし、なっちゃんが僕の事を好きだったら、あの時、何かしら分かって貰える筈じゃぁないか。


しかし、それが無かったって事は、ふられたって事じゃぁないか。


人生初めての挫折感は、胸がぎゅっと締め付けられる様な、ほろ苦い出来事だった。多分、一生忘れないだろうな。そう思った。

         ★

又兵衛が渋い顔で、僕を見上げている。


「おい、保孝、どうしたんだ?全然気合いが入ってないじゃないか、ん?」


そう、昨日の出来事を僕は未だ引きずっていた。
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