遠目の子鬼
又兵衛の『拗ねている』という単語が、物凄く、心に引っかかった。僕が子供だとでも言うのだろうか。まぁ確かに大人では無いにしても子供ではないと自分では思っている。


だから、又兵衛の態度が気になったんだ。


「まぁ、そう言うなよ。良いか、よく聞け保孝」


又兵衛の表情が急に真剣な物になる。かなり本気の表情だ。


「良いか、あの子は、とても頭がいい、そうだろ?」


又兵衛はとても重要な事を打ち明けるかの様に僕に顔を近づけてぼそぼそと小さな声で話した。


「頭が良いと言うのは、勉強の成績が良いと言うのとは違う、周りの状況を考えて、瞬時に結論を導く事が出来る。つまり、空気を読んで、より良い方向に話を持っていく力が有るかどうかという事だ」


もって回った又兵衛の言葉に、僕は何も答える事が出来なかった。


確かになっちゃんは、頭の回転が速いと思う。
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