遠目の子鬼
僕は、ごくっと唾を飲み込むと、又兵衛に尋ねた。


「…つまり?」


「つまり、もう一度やってみろ。一度言いかけて、度胸はついただろ。大丈夫、今度はうまく行く、自信を持て。そして、結果がどうであれくよくよする事は無い。保孝がやれる事をやったんだ。それでいいじゃないか」


急に力が抜けた気がした。


又兵衛の言う事は確かにそうだけど、神様は、そんなにチャンスを何度も与えてくれるほど、気前が良い物だろうか?


又兵衛の話は、何時も的確で納得出来る物ばっかりだけど、この話は、そのまま信じてよい物かどうか、ちょっと複雑な思いがこみ上げて来る。
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