遠目の子鬼
「いいか、保孝。物事には緩急、つまりリズムってもんが大切なんだ」


「リズム?」


「ああ、そうさ。集中する時は集中する、休む時は休む。それを繰り返すんだ。あんまりぎちぎちに引っ張られてると、気がつく事にも気が付かない。そんな事が良くあるんだ」


僕は又兵衛に視線をやると、なんと答えていいのか分からなくて、じっと又兵衛を見詰めた。


「ほらな、そう言う行動に出る事になっちまうんだよ」


又兵衛は、溜息交じりに地面を見なが両腕を組んで、そう呟いた。


「さあ、今日はもうおしまいだ。いいか、今日は早く寝るんだ。何もかも忘れて、ベッドに潜り込んだら、頭の中を真っ白にして、眠る事だけに集中するんだ。良いな」


僕は、じりじりと詰め寄る又兵衛に押されて、思わずこくりと頷いてしまった。
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