遠目の子鬼
「英二、あのさ!」


「あ、ああ、じゃぁまた明日な」


分かれ道。英二の家は角を曲がった処、僕はもう少し歩かなければならない。僕は背中を向けて立ち去って行く、英二の背中を見詰めながら茫然とその場に立ちつくした。

         ★

湯船に浸かり天井を見上げて、僕はぼんやりと考えた。


「“中野”夏子」


結婚したらそうなるんだよな。ちょっと背中がぞくぞくした。熱いお湯なのに、ちょっと寒気が走った気がした。


不思議な感覚だった。

         ★

「…ねぇ、ちょっと聞いてんの?」
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