遠目の子鬼
「じゃぁ、明日な」


又兵衛はそう言うと、ゆっくりと、僕の前から消えて無くなった。


誰も居ない教室に、僕は一人で立ち尽くした。


今、見た物は何だったんだろうか。


これは夢かもしれない。


うん、そうだ。自分は今ベッドの中で眠って居るのかも知れない。


妙にリアルで現実の有る夢を見る事は誰でも有る事だと思う。


目が醒めれば全て夢でしたって事に成るかも知れない。


――がらり


教室の扉が開いた。僕は、その音に驚いて、反射的に、その方向に向かって振り向いた。

「おい、保孝、練習終りだぞ」
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