遠目の子鬼
「こら!」


お姉ちゃんが僕の頬を、ぐにっと掴んで無理やり自分の方に向かって引き寄せた。


「いたたた、痛いよぉ、何するんだよう」


僕はお姉ちゃんに必死で抗議したが、全く受け入れてはくれなかった。


「いい、あんた、中途半端な態度だけはするんじゃないわよ、好きか嫌いかはっきりしなさい、じゃないと、お互い不幸だからね」


なんかお姉ちゃんの表情が険しい。いや、怖いと言った方が正しいかもしれない。


「わかった?」


お姉ちゃんが、ずいっと僕に詰め寄る。


「え、う…う、ん」


僕は作り笑いを浮かべ、なんとなく誤魔化しながらお姉ちゃんから離れようとしたのだが、再び頬をぐいっと引き寄せられて
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