遠目の子鬼
「う、ん、そ…そうだね」


僕は、なっちゃんに呑まれたんじゃないかと思った。


彼女の微笑みは全てを呑み込んで余り有る位の威力が有る。


彼女は僕にとって何なのだろうか?


僕は、もう一度自分に問いかけ直した。

         ★

僕達は、毎日、一生懸命練習を重ねた。


僕個人としても、少し上達した様な感じがして、ちょっとだけだけど、自信という物も付いてきた気がする。


又兵衛に感謝しないといけないね。こんな風に思えるのも皆、又兵衛のおかげかも知れない。


なっちゃんとも合同で何回か練習した。


そのたびに僕はあがったり、緊張したりで、ちょっと複雑だった。


学校のグランドの銀杏並木のざわめきが大きくなる頃、コンクール当日を迎える事になった。


ステージに上った僕達は、皆一様に緊張している。


先生ですら、緊張している様子が隠せない、そんな感じだった。


そして、指揮棒が振り下ろされて、僕達の演奏が始まった。
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