遠目の子鬼
でも、英二みたいにはっきりと宣言出来ない。


成績だって威張れるほど良い訳じゃないし、そこそこの高校行って、そこそこの大学に行って、そこそこの会社に就職して、で、そこそこの…


だめだ、思考回路が暗い方に向かって走り始めてしまった。


こうなると、とりとめが無くなる。僕のいけない処だと思う、思うけど、そうなんだ。


「…やす…保孝」


僕は自分を呼ぶ声にはっとしてその方向に向かって視線を移す。


其処には指揮棒を構えた英二の姿が有った。


「あ、う、うん、ごめん、ぼんやりしてた」


英二はちょっと複雑な笑顔を浮かべると指揮棒を振りおろす。


僕達は英二の指揮で練習を進めた。


「うん、良いんじゃないかな。先生に聞いてもらわないと何とも言えないけど、俺のレベルであ感じるには、十分な結果だと思う」
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