遠目の子鬼
英二は指揮棒の先端で頭を掻きながら皆に言った。


指揮棒で頭を掻くのは英二の癖だ。


しかも、それは機嫌が良い時に出る癖。


僕はそれを見て、少しほっとした。


何故なら僕の旋律部分の演奏も特に問題無いって事だと判断出来るからだ。


この十数小節の演奏…演目はホルスト作曲、組曲「惑星」から「木星-ジュピター-」幻想的な雰囲気の曲目でオーケストラの演奏でもユーフォニュームが使われる。珍しいと言えば珍しい曲だ。


今度の演奏会では、ここに全てをかけるつもりだ。


一世一代って言うのも大袈裟では無い。僕は、ここにかけるんだ。何をかけると言われると、ちょっと困るんだけど。ここを決めないのは男じゃ無い。

気合いが入る。
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