遠目の子鬼
過去二回の演奏会前の練習でも、これは経験済みだったので「麻疹」みたいな物だって、皆、あまり気にしていない様な感じだった。


でも、僕は指折り数える演奏会の日を完全に「びびった」感で迎え様としていた。


こんな時に困った…「スランプ」思う様に音が出ない。


旋律もなんだか浮足立ってておかしい。


抑揚も無いし唇の先端だけで楽器を鳴らしてる、そんな感じが払拭できない。


「なんだよ、此処まで来たらマナ板の鯉、なるようにしかならないんだから、開き直れよ」


英二の有りがたいアドバイスだけど、僕は、そんなに気持ちを切り替えるのが得意じゃ無いんだ。僕ははっきり言って、途方にくれそうな気持だった。

         ★

なっちゃんのドラムロールが晴れ渡った空に響く。


僕は、その様子をなんとなく見詰めていた。又兵衛もつられてそれを見詰めている。
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