遠目の子鬼
彼女の唇は、何時もの様にメロディを口ずさむ。


とても集中して居るのは誰が見ても明らかだ。


額に、うっすらと汗が光る。


パーカッションはバンドのセクションとしては力仕事だと思う。


本当は、がタイの良い男子がやるべきセクションではないかとふと思った。


でも、なっちゃんは、その細く華奢な体つきからは想像できない位、力強く、かつ、軽やかにリズムを刻んでいく。


「…おい、保孝…」


僕は又兵衛に話しかけられるまで、なっちゃんを見詰め続けている事に、気が付かなかった。
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