遠目の子鬼
二人だけの…二人だけの時間。


とても集中している。


ぴりぴりする練習時間の筈なのに僕の気持は逆に安心した気持で満たされて行く。


時間…この時間が永遠に続けば良いと本気で思った。


「よし、今日はこれで終わりにしよう。二人とも、段々良くなってると思う。時間が無くて気持ちが焦るかも知れないが、そこを堪えるのも上達への道だからな」


又兵衛はそう言うと、にっこりと笑った。僕達は二人で顔を見合わせた。そして初めて二人きりな事を意識した。そして頬を染めて、視線を空中に泳がせた。

         ★

「ねぇ、あんた、今度の演奏会で、ソロとか無いの?」


リビングで、お姉ちゃんにぶっきらぼうに聞かれて、僕は、一瞬言葉に詰まった。


「あ、うん、、有るよ?」


一応、そう、答えてみた。でも、お姉ちゃんは、なんだか心配そうな表情。


「あんた、ここ一番に弱いものねぇ…」
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