遠目の子鬼

2) 自信を持って

         ★

ソロパートの部分をゆっくりと演奏する。聞いて居るのは又兵衛…


「…ん、まぁ、悪くは無いんだが」


悪くは無い、あまり嬉しくない評価だ。


可もなく不可もなく要するに特徴が無くて、なんとなく微妙…そう言う意味の意見だと、僕は理解した。


でも…


「わ、悪く無いなら良いじゃない?」


僕は、珍しく、反論した。


それに対して又兵衛は両腕をを組んで、ちょっと俯き加減で、噛んで含める様に僕に答えた。


「あのな、保孝、この場合、悪くないは褒め言葉じゃ無いんだよ。いいか、今、保孝に求められてるのは『良い』なんだよ。そうでないと、皆が迷惑する。ブラスバンドは団体競技だ。だが、個人の技量ってのも大いに求められる。そうでないと全体が良くならない。分かるな?」
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