遠目の子鬼
お父さんは新聞を小さくたたむと、更に話を続けた。


「これでもお父さんは陸上部でね。短距離を専門にやってたんだよ」


「へぇ、お父さん、陸上やってたんだ」


「ああ、一生懸命練習したよ。でも、結局芽は出なかったけどね」


僕は、お父さんのその言葉がちょっと引っかかった。


「努力したのに芽が出なかったの?」


僕は意地悪な質問をしたと思った。


「ああ、残念ながら中学、高校と殆ど補欠だったよ、でもね」


「でも?」
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