遠目の子鬼
がっくりと肩を落として、何事かを呟いている様にも見えた。


「英二…」


周りからの信頼も厚くて何時も全体を引っ張る役目に有る彼だったが今は全体を逆に引っ張るという有ってはならない状態に陥っているのだ。


とても辛い事だと思う。自分の役目が果たせない事は…


そして、その原因が、極度のプレッシャーに有るんじゃないかと考えた。


…又兵衛に会わせよう。


又兵衛なら何とかしてくれるかもしれない。


僕は楽器と譜面台を持って英二の方にゆっくりと歩き出した。


そして、たまには一緒に練習しようと誘った。


「保孝が誘って来るなんて珍しいな」


僕はちょっと曖昧な笑顔を浮かべた。
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