遠目の子鬼
「ん、そいつは?」


又兵衛がちょっといぶかしげな表情で、僕にそう尋ねた。


「前に話した事有ると思うけど、友達の英二だよ」


又兵衛は英二をつま先から頭のてっぺんまで、ゆっくりと見回した。


「困りごとか?」


「…え、う、うん、そうなんだ。ちょっと見失っちゃったみたいなんだ。だから、又兵衛と練習すれば復活するかなと思って…」


「なるほどな。良いだろ。保孝の頼みじゃ断れんからな」


又兵衛は、にっこり笑うと英二に近づいて右手を差し出した。


「あ…あの」


英二は事態が未だ呑み込めないらしい。


「大丈夫だ。取って食ったりしないよ」
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