遠目の子鬼
「え?あ、ああ…」


僕はできるだけ明るく英二に話しかけた。


すると彼は機械仕掛けの人形みたいに小さく頷いて、トランペットをケースから取り出すと二、三度息を吹き込んだ。


僕もユーフォニュームを構えて息を二・三度吹き込んだ。

         ★

又兵衛と練習して居ると思わず時間を忘れてしまう。


もう、すっかり日は暮れて、外套の少ない帰り道は、すっかり闇に包まれていた。


僕と英二は二人並んで家に向かってゆっくりと歩いていた。


秋も随分と進んだ様だ、気温も涼しいから肌寒いに変わりつつ有った。


道なりに広がる田園風景、稲穂も重そうに頭を垂れている。虫の音も蝉からコオロギに変わった。


「おい、保孝…」


「うん、なあに?」
< 221 / 274 >

この作品をシェア

pagetop