遠目の子鬼
「こんばんは」


僕達は背後から、そう話しかけられて、同時に声の方向に向かって振り向いた。


其処には、息を切らせたなっちゃんの姿が有った。


「練習に熱が入りすぎちゃった。こんなに遅くなるなんて思わなかったわ」


なっちゃんは、眩しい笑顔でそう言うと、英二の横につく。


「駄目だよ、女子はもっと早く帰らなきゃ」


英二は、ちょっと怒った様な口調でなっちゃんに答えた。


なっちゃんは、それを聞いてちょっと済まなそうに答える。


「うん、明日はちゃんと早く帰るわ。日が短くなったわね。ちょっと前なら、この時間でも、十分明るかったのに」


「ああ、もう、秋だよ」


英二がぽつんと、そう呟いた。
< 225 / 274 >

この作品をシェア

pagetop