遠目の子鬼
家に向かう角を曲がって僕は一人になってから、ふと思った。


なっちゃんは、つけ入る隙が無い位の腕前を持っている。


天性の感覚と言っても良い位だ。


それでもこんな時間まで練習してるんだ。


僕は彼女を見習わなければならないと思った。


そう、思ったのだが、不自然な感覚に襲われて、僕はちょっと考え込んだ。


なぜ?


うん、なぜか…なぜの意味も僕は理解できなかった。そうだ、なぜ、なっちゃんは、現れたのだろう?


別に不思議な事では無い。なぜなら、演奏会が近くて、皆自分自身で不安な処は徹底的におさらいして、その結果、帰宅が遅れた。しごく普通の事では無いか。
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