遠目の子鬼
僕の考えは少し横道にそれた。


お母さん達の恋愛時代ってどんなだったんだろう?ちょっと気になった。


始めからいきなり両想いで始まったのだろうか?そんな筈は無い。


絶対、片思いから始まった筈だ。どうやって告白したんだろう。その勇気はどうやって得たのだろう。


聞いてみよう…ひょっとしたら、僕の力になってくれるかも知れない。

         ★

お父さんは少し困った様な表情でキッチンで洗い物をするお母さんにちらりと視線を向けたが、読みかけの新聞で顔を覆うと、ぼそぼそと、僕に答えた。


「あのな、保孝…」


「え、う、うん…」


「好きか嫌いかは、姿形で決まる物じゃないんだよ」


「う、ん」


僕は、お父さんが、何か重大な秘密を告白している様に思えて、思わずお父さんの方に身を乗り出した。


「…何と言うか、この…気が合うか会わないかって言うのが一番重要で、更に言えば、何時も一緒に居て、疲れる事が無いか…そのへんが肝心な事だと思うんだよ」
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