遠目の子鬼
又兵衛は右手の人差し指を立てて、それを小さく振りながら、何時に無く熱く僕に語った。


「でも、でもさ、運命だって決まってる事を、切り開いていくのが人生なんじゃ無いの?」


「ああ、そうさ、運命に逆らって人生を切り開く。大事な向上心だ。でもな、それが上手く行ったとしたら、それが運命だって事なんだ」


僕は思った、そして言葉に出した。


「納得できない!」


僕は何故か大声でそう、叫んでいた。


でも、又兵衛は表情を崩す事無くそれをしっかり受け止めた。


「保孝、ほんとに、しっかりしてきたな。月並みだが、俺が保孝に教える事は、もう殆ど無いに等しいよ」
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