遠目の子鬼
僕は自信を持って又兵衛にそう答えた。


僕は、どんな試練が訪れても希望を捨てないで生きて行こうって思う事が出来る様に成った気がした。


いや、気がしただけでは無い、出来る、そう信じる事が出来る。


うん、少し大人になったんだ、そう感じる事が出来た。


僕は、これからも、胸を張って生きて行く事が出来る。


少しだけだけど、そう感じられる様に成った。

         ★

市の文化センター。その大ホールのステージで僕達は演奏会のリハーサルを行っていた。

リハーサルでとはいえ、舞台に上がって音を出すときっちりと緊張している自分が分かる。とりあえずの照明が舞台を照らし、その照り返しが眩しい。それが皆の気分を高揚させていた。


「よし、この感じで行きましょう。じゃぁ開始20分前に集合してください。それまでは自由時間にします」


先生の指揮棒が譜面台に置かれて、リハーサルは無事に終了した。


そして、僕達はぽっかりと空いた何もしない時間を過ごす。この時間が妙にくすぐったくて妙に心地よい。
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