遠目の子鬼

3) 静かに輝く…

「保孝、集中して。早く演奏するんだ」


「え――う、うん、分かったよ」


僕はマウスピースに唇を付けると、おなかの底から息をユーフォニュームに吹き込んだ。


とても清んだ中低音が見渡す限りの原っぱに響き渡る。その音に吹いた自分が驚いた。


「又兵衛――」


僕は驚いて彼の顔を覗き込んだ。


「どんどん吹いてみろ、保孝」


又兵衛は、僕の顔を見ると、にこりと笑った。


僕は又兵衛に言われた様に、思い切って演奏した。


それは、とても気持ちが良い物だった。
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