遠目の子鬼
息を吹き込む度に、爽やかな風が駆け抜けて光の様に広がって行く。


気持ちがいい。


とっても気持ちがいい。


気分がとても高揚する。


そして自分の演奏が自分の頭に響き渡る。


どんな難しい演奏でも出来そうな気がした。


僕は世界一のユーフォニューム演奏家だ。


そう思った瞬間――突然高揚感が途切れる


「おーい、保孝、終わりにしようぜ」


何時もの様に英二が教室に入って来る。


そして英二と僕の視線が合う…


彼は僕を見てちょっと驚いた様だった。


「お、おい、保孝、どうしたんだ?」


僕は英二の質問の意味が一瞬の見込め無かった。
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