遠目の子鬼
ブラスバンド部でささやかな引退セレモニーが行われた。


これで三年生のブラスバンド部としての活動が全て終了した。


次期部長から英二が花束を受け取って、ちょっとぎこちない挨拶。


こんな時でもうけを狙おうとする英二のサービス精神には頭が下がる。


セレモニーが終わって音楽室を出ると、何故か妙に空間がすかすかする感じがした。重大な決まりごとが一つ無くなった。


始めた頃には、想像出来なかったこの感覚。どんな言葉が一番合うのか考えてみた。


――虚脱


これが一番、しっくりくる言葉だと思った。


この三年間、一生懸命駆けて来た。そして急ブレーキで停止した時に見えた景色が『虚脱』だ。


逆に考えれば、僕はそれだけ一生懸命やったって事だ。
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