遠目の子鬼
「又兵衛…」


僕は又兵衛の前で大粒の涙を流しながら泣いた。涙が頬を伝う感覚…


心地よかった。


涙を流すのが、こんなにも心地よいものだとは、今迄思った事は無い。


僕は心の中の全ての思いを吐き出す様に泣いた。そして又兵衛も…


教室に柔らかな日差しが差し込む。


「さ、お別れだ、保孝」


又兵衛は、頬の涙をぬぐいながら僕に向かってそう言った。


「…うん、寂しいけど、お別れだね」


僕も涙をぬぐう。そして又兵衛をじっと見つめた。
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