遠目の子鬼
だけど、そこから又、全てが始まる様な気がした。


僕は、もう一度、又兵衛の顔を見るために振り向こうとした。


「保孝、もう、振り向く必要は無い。まっすぐ行け。何が有っても。一つの目標をやり遂げる事が出来たんだ。何でも出来るさ、そう信じるんだ」


又兵衛が僕に送ってくれた最後の言葉だった。


僕はそれを聞いて小さく頷いた。


そして又兵衛に向かって振りかえること無く教室を後にした。


何かに背中を押されている様な感じだった。


快い感覚…そう、何でも出来るさ。


そう、確信した。大きな海が目ぼ前に広がっている様に感じた。
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