遠目の子鬼
僕は今本日をもって、教師生活に別れを告げるのだ。


歳を重ねてそれを祝福してもらえるのは人生最の喜びではないか。


そう思った時、頭の中で時間が凄いスピードで逆行していくのを感じた。


そして、彼の顔が目に浮かんだ。


又兵衛…


そう、僕の人生の原点は彼なのだ。


もし、あの時、彼に出会っていなければ、僕は、今こうして、人生を祝福される立場に居たかどうか分からない。


中学三年と言う、特殊な時期に彼に出会った。


運命と言ってしまえばそれまでなのだろうが、僕は又兵衛に出会った事は必然ではないかと思っている。そして、もしかしたら、この中の誰かが又兵衛と出会っているかも知れないとも思った。
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