遠目の子鬼
学校に向かう道すがら、何時も通り英二が僕の後ろから声をかけて来る。


「おっす、保孝――どうした、朝から機嫌よさそうだな」


「ん、別に何でも無いよ」


「へぇ、そうかい?そうは見えないけどなぁ」


英二が、僕の横に並んで、まじまじと顔を覗き込んでくる。


「ホントか?ホントは何かいい事有ったんじゃないのか?」


「ううん、無いよ、普通だって」


僕は英二の追及を逃れようと、顔を少し引いて体をちょっと放そうとした。


――とすん。
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