遠目の子鬼
しかし、それは事実であるので、彼に反論する事はしなかった。


そう、僕は、何事をやるのにも、倍の時間が必要な人種なのだ。勉強も運動も部活も。そんな事は自覚して居る。そして納得も。


それは両親の口癖に由来してるんだと思う。


「お前は勝負運に恵まれてない。だからギャンブルなんてもっての外。地道に努力して、それで一人前だと」


楽器の手入れを終わって、ケースの蓋を閉めて、僕は立ち上がると、ちょっと痛む背中をさすりながら、僕の作業が終わるのを待ってくれている彼に


「終わったよ、じゃぁ帰ろう」


と、声を掛けて、二人で音楽室に向かって歩き出した。


そして楽器を倉庫に戻して、一日の学校生活が終わり、僕たちは家路についた。
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