遠目の子鬼
「お父さん、夢が有ったんだ」


「夢?どんな?」


「うん、それはね、小説家に成りたかったんだ。小さい頃から、物語を作るのが楽しくて、いつか、それを仕事に出来たらって思ったんだ」


「ふうん…でも、お父さん、その夢、叶わなかったんだよね…」


「ああ、そうだよ。でもね、お母さんと出会って、保孝が生まれてから、お父さんの夢は変わったんだ」


「変わった?」


「そう、お父さんの夢は、保孝と、お母さんを幸せにすること。だから、一生懸命、仕事をして二人を養う。これは、お父さんの夢以上に大切な事だと、思ってる」


「でも、本当の夢を諦めるのって、淋しい事じゃないの?」


僕の問いに、お父さんは優しく微笑むと、再び、ゆっくりと頭を横に振った。
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