遠目の子鬼
そう言うと、英二は一目散に僕の前から消えて無くなった。


僕は何が起こったのか、一瞬理解出来なかった。


そして頭が冷静さを取り戻すにつれて、英二が一世一代の告白をした事に気が付いた。


英二は、なっちゃんが好き。


結婚したいとも思ってるんだ。


有る意味羨ましい。好きな子が居るんだ。


僕もなっちゃんは嫌いでは無い。


――いや、とても好きだ。


明るくて屈託無くて誰とでも明るく話す事が出来る彼女。


――僕は英二に頑張れよって心の底から思った。僕も応援するよ。英二、君なら、なっちゃんも好きって言ってくれるさ。


僕は何となく、心が弾んだ。自分の事では無いのにだ。僕は英二を応援するよ。きっと成就出来るさ、英二だもの。


「保孝、お前はどうなんだよ」


「え?う、うん…」


突然現れた又兵衛の問いに、僕は咄嗟に答える事が出来なかった。
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