遠目の子鬼
「まったく、世の中、好きだの嫌いだの、ほんとにめんどくさいよな」


僕は又兵衛の言葉に少し違和感を感じた。


人間は『好きだ嫌いだで面倒くさい』という件だ。それって、当り前の事だと思う。でも、又兵衛の世界では特別な事なのだろうか…


「ねえ、又兵衛…」


「――ん、なんだ保孝」


又兵衛は両腕を組んで、片目だけで僕を見ながら、少しぞんざいな感じで僕に答えた。


「又兵衛の世界って、どんな処なの?」
< 59 / 274 >

この作品をシェア

pagetop