遠目の子鬼
そんな話題でひとしきり盛り上がった後、僕達は彼の家の前で別れ、一人で自宅への道を急いだ。

         ★

夕食が済んでから僕は宿題を片付け始めた。


数学は苦手だ。


公式を見ても何が何だかちんぷんかんぷん。


地理や歴史の方が遥かに楽だと思った。


取り合えず全て覚えてしまえばそれで、ほぼ目的達成だからだ。


合ってるか違ってるか分からないが一通りノートを埋めると次の日の準備をしてパジャマに着替えてベッドに潜り込んだ。


思い出したのは今日の部活で先生に言われた事。


明日はうまく出来ますようにと祈りながら、僕は眠りに落ちた。

         ★

今日も全体練習が終わって個人練習の時間に成った。


そして今日も昨日指摘された事を繰り返してしまった。


『伸び悩み』という単語が頭の中を埋め尽くす。


どうすれば良いのだろうか――練習以外に道は無し。


僕はそう決心すると、楽器を構えて譜面台に向かった。
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