遠目の子鬼
「さあ、ここだ」


又兵衛がちょっとすました感じで、僕を森の中に誘う。


僕は躊躇う事無く森の中に入って行った。


「うわぁ…」


森に入った瞬間、目の前に広がった光景に、僕は思わず足を止めた。


木漏れ日の回廊が、目の前に広がる。


「保孝、こっちだ」


僕は又兵衛に誘われるがまま森の中を進んでいった。


そして暫く進むと、一本の大きな木…その木を見て、僕は気が付いた。


ここは森なんかでは無かったのだ。


今、目の前に有る大木、その枝葉が大きく天空を覆っているのだ。


それがあまりにも大きくて、森の様に見えて居たのだ。


「凄い樹だね…ここが又兵衛が育ったところなんだ」
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