遠目の子鬼
僕はちょっと疑問に思って又兵衛に訪ねた。


でも、これは、あまり聞いちゃいけない事だったらしい。


又兵衛達の表情がみるみる曇って行く。


「女房か…ああ、居ないよ」


「え…居ない…って」


「死んじまったよ、かわいそうな事をした」


「亡くなった?」


「流行病にかかってな。子供の事を心配しながら死んじまったよ」


僕は心が締め付けられた…いけない事を聞いてしまった事に。


「もし、俺達が人間だったら、こんな事にならなかったろうにな」


又兵衛は、がっくりと肩を落とし呟く様に僕に言った。又兵衛の言葉が再び心にずしんとのしかかる。

「でも、人間だから死ななかったってことは、無かったんじゃないのかな…」
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