遠目の子鬼
「いや、人間の世界は俺達の世界とは比べ物にならない位、医療技術が進んでいる。だから、もし、俺達が人間に生まれてれば、こんな思いする事は無かったんだよ」


又兵衛の肩が小さく見えた。


又兵衛はきっと、奥さんの事が大好きだったんだ。


そしてそれは今でも変わらない。


「――又兵衛、ごめんね、思い出したくない事思い出させちゃって」


心の底から又兵衛に済まないと思った。


何時も強気で僕の事も小さな体で一括する位の迫力が有る又兵衛なのに…


――ごめんね


僕は心の底から又兵衛に謝った。

「まぁ…でもな、何時までもくよくよしてる訳にもいかねぇだろ、なんだよ、辛気臭くなっちまったな」
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