遠目の子鬼
又兵衛はそう言うと、両目を閉じて、お茶を一口啜った。


切り開けない運命…僕はそれが、どうしても理解出来なかった。


「ねぇ、又兵衛…又兵衛は僕にユーフォニュームの練習付けてくれたよね?」


又兵衛は右目を開けて僕をじっと見る。


「それも、運命の一つなの?」


又兵衛は又、お茶を一口啜る。


「ああ、そうだ。この事は、俺が生まれる前から決められて居る事なんだ。だから俺は保孝の前に現れて、あの、ユーフォ何とかを教える事に成ったんだ」


又兵衛の表情は硬い。


何時もの練習の時には見られなかった表情だ。
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