遠目の子鬼
僕はそれが少し悲しくなった。


その事に又兵衛は気がつたらしい。


「なんだよ、保孝、辛気臭い顔すんなって。俺はそれでも幸せだ。だから保孝ともちゃんと出会ったろう。全ては上手く言ってるんだ。だから気にする事は無いやね」


又兵衛の笑顔が少し痛々しかった。


確かに僕と又兵衛は出会った。


それが偶然では無くて決められた運命で導かれて決められた通りに出会った。


偶然で居て欲しかった。


何故そうなのかは分からないが僕は又兵衛と出会った事が偶然の悪戯で有って欲しかった。


出会い方などどうでも良いかも知れないが少なくとも又兵衛との出会いは偶然の産物で人生のレールが敷かれて居たとしても彼はそのレールの上に偶然置かれた石で有って欲しかった。


そうでなければ、又兵衛が可哀そう過ぎる様な気がしてならなかった。


「又兵衛…」
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