遠目の子鬼
英二の瞬発力が羨ましくも思う。

         ★

思った通りで、初見の演奏はメタメタで先生も苦笑いだった。


良く練習して置く様にとの言葉を頂いて僕達は個人練習の為に音楽室から解散した。


「演奏会?そうか、保孝の晴れ舞台か」


又兵衛が嬉しそうに僕に訪ねた。


「晴れ舞台なんて…そんな…」


僕は何故か「晴れ舞台」と言う言葉が、ちょっとくずぐったかった。


確かに晴れ舞台だ。


何しろ、ユーフォニュームソロが有る。


たった十数小節だけど僕が一番目立つ処が有る。


そう思うだけで冷たい汗が滝の様に流れ出す。
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