遠目の子鬼
「さあ、練習するぞ!」


又兵衛が満面の笑みで僕に、そう話す。


僕も、うんと頷いてユーフォニュームを構えると、ゆっくりと演奏を始めた。

         ★

「へぇ、そうか。そりゃ楽しみだな」


演奏会で僕のソロが有る事をお父さんに言うと、とっても嬉しそうに僕に答えた。


「うん、でも、十小節位の短い処だから、あんまり目立たないし」


「いや、そんな事は問題じゃぁ無い。顧問の先生も、保孝ならって言う事で任せてくれたんだろう?それは、とても名誉な事だ、お父さん、必ず見に行くからな」


笑顔がこぼれ落ちると言う表現がぴったりだった。


僕はお父さんに期待された。


お父さんの言う通り顧問の先生からも期待されて居るのかも知れない。


そう思うと自然に力が漲ってくるの感じた。


うん、そうだ、又兵衛と練習すれば大丈夫だ。
< 84 / 274 >

この作品をシェア

pagetop