遠目の子鬼
彼女は真剣な表情で楽器と先生の指揮を見ながら演奏を続けて居る。


その凛とした表情に僕は何故かどきりとして彼女から視線を外して俯いた。


「よ～し、じゃぁ今日はこれまで。後は各自、今日の課題を、おさらいして置く様に」


先生の声に僕ははっとして顔を上げる。


同時に皆が立ち上がり自分の楽器を持ち、お気に入りの教室に向かって移動を始めた。


僕もユーフォニュームをケースに仕舞って音楽室の出口に向かって歩き出した。


何気ない何時もの行為だった。


英二は今日、ちょっと指摘事項が多かったので、メモを書き込んだ楽譜を見詰めながら、既に何時もの教室に向かって姿を消していた。


僕は何気なく、なっちゃんの方に視線を向けると、その視線となっちゃんの視線が偶然有ってしまった。


――僕達は何故か見詰めあう。
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