遠目の子鬼
自分にそう言い聞かせながら、僕はユーフォニュームを演奏し続けた。


動物達の耳が、ぴくぴくと動くのが分かる。


僕の演奏を聞いてるんだ。


「よし、保孝、今日はここまでにしようか」


腕を組んで俯きながら僕の演奏を聞いていた又兵衛が、そう言って顔を上げた。


「うん、そうだね。ありがとう、又兵衛…」


そう言って、又兵衛に視線をやったのと同時に僕の心臓が凍りつきそうになった。


そして、危なく楽器を落としそうな位、驚いてしまった。


「――な……なっちゃん」


僕の視界に、はっきりと、なっちゃんの姿が飛び込んできた。


なっちゃんが、僕と又兵衛の世界に現れたのだ。


なっちゃんは自分の見て居る光景が信じられないらしく唖然とした表情で僕達を見て居る。


――バレた。僕の練習の秘密が。
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