白黒先生-二重人格彼氏-

「さぁ…知りませんけど、あたしは先生が見てきたような簡単な女じゃありませんからっ!」

あたしは睨むような視線で先生を見る。

『簡単な女』のところを強調して。


「じゃああたし、授業戻るんで。誰かさんのおかげで貴重な時間が潰されちゃいましたし」

嫌味っぽく言ってみせる。

うわぁ、今のあたし、我ながらすごくうざい。


背を向けてドアノブを握ろうとしたとき、背後でポツリと小さく言葉が呟かれた。


「…悪かったな」

「へっ?」

この部屋には二人しか居ないはず。

…ということは、さっき謝ったのは先生だ。

一番吐きそうにない言葉を吐いたのは先生だ。


ソファに座っている先生はいつになく子供っぽくて、しょんぼりしているというよりは、拗ねた子供みたいな顔だった。

< 100 / 162 >

この作品をシェア

pagetop